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65歳男.橋本病でdried thyroid内服中に体重減少と左背部痛のため受診し胸部単純X線像で右上縦隔の腫脹を指摘された.呼吸音清明,表在リンパ節は触れなかった.眼瞼下垂なく神経学的所見に異常はなかった.胸部CT所見は前縦隔リンパ節一部石灰化を伴う腫脹と両側の胸水を認めたが肺野の異常,胸椎浸潤はなかった.Gaシンチ所見は縦隔,肺門に異常集積を認め,頸部の集積は橋本病のためと考えられた.甲状腺左葉穿刺吸引細胞所見はclass 1,左背部痛のための心カテーテル検査においても循環器疾患は認められなかったが,初診から2ヵ月後に両側の握力低下,右上・下肢の不全麻痺が出現した.入院時の頸胸椎MRIではC6~Th1の椎体および椎間板は変形していた.CRGは経過中5mg/dl前後を推移し陰転化はしていなかったが抗生物質の加療はしていなかった.脊椎浸潤の疑いも否定できないため,胸腔鏡下リンパ節生検を施行した.手術では胸腔鏡下で右胸腔を観察し縦隔リンパ節は#2~#4が腫脹しており#2リンパ節は境界明瞭で2×3cm大に腫脹しており,病理診断ではリンパ節結核腫で上皮細胞の増殖と陳旧性の瘢痕像を呈しているが結核菌染色は陰性であった.術後isoniazid,rifampicin,ethambutol hydrochloride,pyrazinamideを開始し6ヵ月間内服した.縦隔の腫瘍は縮小し,握力の回復は得られたが脊椎カリエスは進行し,一時的に完全麻痺となった.下半身はリハビリテーションの継続で術後1年には機能を回復し歩行も可能となった.画像診断その他の検査で確定診断が得られない縦隔リンパ節結核腫診断には胸腔鏡下生検が有用と考えられた
©Nankodo Co., Ltd., 2006