特集 動く細胞・群れる細胞:発生・免疫・がんにおける「個」から「集団」レベルの細胞動態を追う
【第1部】自発性・自律性 ゆらぎの伴うシグナル伝達系による走化性細胞のロバストな勾配センシング
柴田 達夫
1
,
西川 正俊
,
上田 昌宏
1理化学研究所発生再生科学総合研究センター フィジカルバイオロジー研究ユニット
キーワード:
Cyclic AMP
,
Dictyostelium
,
シグナルトランスダクション
,
細胞膜
,
走化性
,
理論モデル
,
細胞極性
,
PTEN Phosphatase
,
Phosphatidylinositol 3,4,5-Triphosphate
,
自己組織化
,
ゆらぎ
Keyword:
Cyclic AMP
,
Cell Membrane
,
Chemotaxis
,
Dictyostelium
,
Models, Theoretical
,
Signal Transduction
,
Cell Polarity
,
PTEN Phosphohydrolase
,
Phosphatidylinositol 3,4,5-triphosphate
pp.592-597
発行日 2014年5月22日
Published Date 2014/5/22
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走化性細胞において外部の誘引物質勾配に応答するシグナル因子は,勾配のない状況でも自発的に非対称性を作る.非対称性の形成やその方向は時間的・空間的に揺らいでいて,ランダム性を伴っている.蛍光イメージングの統計的な解析とそれに立脚した数理モデルから,自発的に非対称性を作るメカニズムは反応の振動性や興奮性に起因することが示唆された.走化性シグナル伝達系が興奮性の性質を持つことは,細胞のパルス刺激に対する応答や不応期の存在などを実験的に示すことによって確かめた.さらに,誘引物質の勾配実験から,非対称性を自発的に作る同じ機構が勾配による方向のバイアスを受けた結果,勾配方向に向いた非対称性を作り出すことがわかった.これらは細胞がその運動の頑強性を維持しながら繊細に勾配を感じ,走化性を実現するための仕組みと考えることができる.
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