特集 受精メカニズム新論争〜ドグマの再構築〜
Cell Tech Eye チロシンのリン酸化を介さない受精能獲得
立野 裕幸
1
1旭川医科大学 医学部生物学教室
キーワード:
Calcium
,
精子受精能獲得
,
精子
,
精子活力
,
体外受精
,
卵
,
先体反応
,
Calcium Ionophores
Keyword:
Calcium
,
Fertilization in Vitro
,
Ovum
,
Sperm Capacitation
,
Sperm Motility
,
Spermatozoa
,
Acrosome Reaction
,
Calcium Ionophores
pp.378-379
発行日 2014年3月22日
Published Date 2014/3/22
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- 文献概要
哺乳動物では,体内および体外,いずれの受精であっても,精子は受精能獲得と呼ばれる生理的な機能変化を起こす必要がある .受精能獲得に伴って,精子はハイパーアクチベーションと呼ばれる鞭毛運動の活発な非対称的運動を示すようになり,先体反応を起こすことができるようになる.最近では受精能獲得の分子機構についても理解が進んでおり,カルシウムイオン(Ca2+)や炭酸水素イオン(HCO3-)によって作動するサイクリックAMP(cAMP)依存性タンパク質キナーゼA(PKA)の経路が働いていることが報告されている .その経路の中で,とりわけチロシンのリン酸化が重要なイベントであると考えられている .マウス精子の場合,受精能獲得培地の中ではすぐにPKA活性が現れ,その後30〜45分でチロシンのリン酸化が起こり始める .60分ほど経つと多くの精子はハイパーアクチベーションを示し,このタイミングで媒精(精子と卵子を同じ培養液中に置くこと)すると精子は30分以内に卵子を包んでいる顆粒膜細胞層と透明帯を通過して卵内へ進入する.
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