特集 新たな創薬ターゲットとしてのトランスポーター:明らかになるその構造と新機能
Cell Tech Eye メタボロミクスによるトランスポーター機能の探索
杉浦 智子
1
,
加藤 将夫
1金沢大学 医薬保健研究域(薬学系)分子薬物治療学研究室
キーワード:
Carrier Proteins
,
Ergothioneine
,
表現型
,
嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質
,
ノックアウトマウス
,
メタボロミクス
,
Organic Cation Transporter OCTN1
,
Solute Carrier Family 22 Member 5
,
Urate Transporter
,
多剤耐性関連タンパク質2
,
多剤耐性タンパク質3
,
Organic Anion Transporting Polypeptide 4C1
Keyword:
Solute Carrier Family 22 Member 5
,
Carrier Proteins
,
Ergothioneine
,
Phenotype
,
Mice, Knockout
,
Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator
,
Metabolomics
,
Multidrug Resistance Protein 3
,
Urate Transporter
,
Multidrug Resistance-Associated Protein 2
,
SLCO4C1 Protein, Human
pp.546-547
発行日 2012年4月22日
Published Date 2012/4/22
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- 文献概要
トランスポーターは,細胞膜表面に発現し細胞内外の物質輸送を司り,生体内由来や外来性の基質を輸送することで,生体の恒常性維持に寄与すると考えられる.近年,トランスポーターをコードする遺伝子型と表現型との対応から一部のトランスポーターの恒常性維持に及ぼす役割が明らかとなってきた.一例として,カルニチン欠乏症(OCTN2/SLC22A5),嚢胞性線維症(CFTR/ABCC7),Dubin Johnson症候群(MRP2/ABCC2),進行性家族性胆汁うっ滞(PFIC,MDR3/ABCB4,BSEP/ABCB11),腎性低尿酸血症(URAT1/SLC22A12)などが挙げられる(括弧内はトランスポーター遺伝子とその遺伝子産物名を表す).これらはいずれも基質(例えば,カルニチン,塩素イオン,ビリルビン,胆汁酸,尿酸など)のトランスポーターによる輸送能が,遺伝子変異により変化することが疾患の発症に結びついている.以上の例では,遺伝子の違いによって明確に異なる表現型が見られるため,そのトランスポーターが生体内で何を輸送しているかを比較的容易に推定できる.一方で,トランスポーター遺伝子の変異や欠損で野生型との表現型の違いが観察されない場合,そのトランスポーターの生体内での役割や基質をどのように解明すればよいのだろうか.この疑問は,とりわけ薬物などの外因性基質を主に輸送するトランスポーター(薬物トランスポーター)で,しばしば起こる.遺伝子を欠損させた動物を作製しても,その動物は見かけ上,野生型の動物と何ら違いがない薬物トランスポーターは多い.これらは生体内で,いったい何を輸送しているのだろうか?
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