第5章 腹部 1. 上腹部

上腹部において腫瘍の由来臓器を推定する方法として，腫瘍と臓器の位置関係に注目する方法（connection sign，beak sign，embedded organ sign，phantom organ sign /stretch sign），栄養血管に注目する方法（prominent feeding artery sign / prominentdraining vein sign），リンパ節転移形式に注目する方法（sentinel lymph adenopathysign）が提唱されている．

beak signは偽陽性となりやすく，他のsignと矛盾する場合は，後者を重視した方がよい．

腫瘍が，ある臓器の本来存在するべき部位に位置し，その臓器の所在が不明な場合，腫瘍がその臓器由来であるとするphantom organ signが知られているが，良性〜低悪性腫瘍では，辺縁に圧排された由来臓器を認識することができる．これをstretch signと命名し，より信頼性の高い由来臓器推定法と考える．

本項では，由来臓器の推定がしばしば問題となる解剖学的部位ごとに，症例提示を中心に由来臓器推定を試みた．