Derm.2005
白人には美黒?
西村 栄美
1
1北海道大学創成科学研究機構,および皮膚科
pp.32
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100159
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海外で生活してみると,当たり前と思っていた常識や美意識が,日本特有のものであったり,東アジア特有のものであることに気づく.色白肌をよしとするのも,日本を筆頭とする東アジア諸国に特徴的に見られる嗜好のようである.北欧のように冬が長く,日照時間が短い国では,待ちかねた春が訪れると,太陽を浴び,日焼けしてみたい気持ちになることも,ボストンに住んでみて少しは理解できるようになったが,どうもそれだけではない.アメリカ人,ヨーロッパ人とも,小麦色に日焼けした肌をより魅力的,健康的と考える人が実に多い.欧米では,休暇中に日焼けして職場に戻ると,日焼けが褒められるうえに,バカンスもしっかりとっていて立派と評される.日光浴のために顔面や襟元に加えて腕なども薄いシミ(老人性色素斑)だらけという白人も珍しくはないが,誰も気にしている様子はない.『色の白いは七難隠す』という発想は白人にはまったく伝わらない.紫外線が皮膚癌の誘因となることも認識されているものの,太陽への憧れや日焼けした肌への憧れのほうが強いと見える.そういうわけで,色素細胞を研究する米国の研究室では,紫外線を浴びることなく皮膚をこんがり茶色にできないものかと美黒剤(?)の開発を目指す.そんな留学先の研究室においても,真夏に皆で外出するときに帽子をかぶるのは日本人の私一人.サングラスでキメた仲間から首を傾げられているうちに,“日本人だからね”と納得されるようになった.それでも,欧米では日傘は禁忌.狂気の沙汰と思われかねない.
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