特集 活性酸素シグナル制御とレドックスホメオスタシス
せるてく・あらかると
アメリカで学んだ付加体研究
内田 浩二
1
1名古屋大学大学院生命農学研究科 応用分子生命科学専攻
pp.173-174
発行日 2012年1月22日
Published Date 2012/1/22
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活性酸素や過酸化脂質など,内因性活性種によるタンパク質の非酵素的修飾に関する研究に取り組んではや20年になる.アミノ酸側鎖に創られる新たな化学構造(付加体)の魅力に惹かれ,これまで数々の新規な付加体の構造を明らかにしてきた.正確に数えたわけではないが,異性体などを含めると30種以上になると思う.大げさだが,それらのほとんどがこれまで誰一人として見たことのない化学構造であり,それらを明らかにすることにささやかながらロマンを感じた.このタンパク質付加体に関する研究が私を魅了して止まないのは,こうした付加体が私たちの体の中で実際に生成され,健康や寿命に大きく関わっている可能性があることである.すでに様々な病態組織において検出されており,付加体を通じて医学研究に多少なりとも携わることができ,人様のお役に立てるかもしれないというところにやりがいを感じている.付加体の化学構造は有機化学的にはシンプルなものが多いが,逆にシンプルなものほど生体内で生成しやすく,またシンプルな構造の中に複雑さ,巧妙さ,意外性などが見つかる場合もあり,小さいながら科学的発見を味わうことができる.
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