第2特集 ブッダに学ぶ生老病死─臨床と仏教─
臨床と仏教の接点
苦しみを通して到達できる叡智がある
-─仏教者による臨床的活動の思想的背景─
大菅 俊幸
1
1公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 専門アドバイザー
pp.1580-1583
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025120012
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はじめに
今年は阪神淡路大震災から30 年.当時,筆者はボランティアとして神戸に駆けつけ,それを機に「シャンティ国際ボランティア会(Shanti Volunteer Association:SVA)」の職員となったのも30年前であり,とても感慨深いものがある.現在は同会で専門アドバイザーを務めている.
「シャンティ(Shanti)」とは古代インド語のサンスクリット語で,心の平和,寂静を意味する言葉である.そもそも当会は1981年に「曹洞宗ボランティア会」として発足し,1999年に「社団法人シャンティ国際ボランティア会」に改組した.2011年には公益社団法人として認可された.発足以来,今日まで44年間にわたって学校建設や図書館活動など,主としてアジアの国々において子どもの教育や文化の支援に,そして国内外の災害支援にも取り組んでいる.仏教精神を拠り所とする僧侶と市民による国際協力の団体である.
さて,仏教はキリスト教などに比べて社会活動に積極的でないと指摘されることがあるが,歴史上,献身的に慈悲の実践に身を挺した仏教者がいなかったわけではない.とくに近年,災害支援における僧侶の活躍ぶりには目覚ましいものがある.仏教は,ボランティアや社会活動の根底にある考えを的確に表現している宗教だと筆者は考えている.そのように確信するようになったのはとりわけ

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