特集 発達障害×慢性疾患
発達障害×慢性疾患 ケースレポート
発達障害をもつ児童・思春期の診療─ 家族から情報をどう聞くべきか? ─
龍田 直子
1
1大津市子ども発達相談センター
pp.971-975
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023080008
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症例に関する心身医学的考察
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)を疑う症例である.緘黙が疑われる ほどのコミュニケーション課題,抜歯後に回避・制限性食物摂取症を発症するほどの過敏 さ,固執傾向からは,自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)も疑われ る.本例のように,受動的なASDでは,幼少期には気づかれず,学齢期以降に心身症な どをきっかけに発達障害を疑われることも多い.心身症とは「身体疾患のなかで,その発 症や経過に心理社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態」1) をいい,IBSはその代表的疾患である.本例の場合,発症の心理社会的背景には,友達や 学習をめぐる葛藤,親の期待や意向の強さ,心身の疲労蓄積などが推測される.さらに, 予期不安(痛くなるのではないか)や思い込み(食べたら必ず痛くなる),極端な対処行動 (欠食)によって症状が強化され持続遷延しているのだが,こうした認知行動の偏りには, ASD特性が強く影響している.
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