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Ⅰ.はじめに
広汎性発達障害(pervasive developmental disorders:広汎性発達障害と表記された部分のみ以下PDDと略)は、自閉性障害やアスペルガー症候群などをはじめとした自閉症類似の病態の総称とされている。そして、PDDの障害特性には、対人的相互反応における質的な障害、コミュニケーションの質的な障害、制限された常同的な行動、興味および活動がある。これらの障害特徴から、野村(2006)らは、PDDの子どもは愛着の形成が遅れ、周囲からは躾の悪い子として見られ誤解を招きやすいと述べている。根来(2004)はPDDの子どもと母との関係において、母親は育てにくさを感じ、育児困難感を訴えていると報告し、渡辺(2007)は、PDDの子どもの障害特性は、親にとって子育ての労苦や負担がとても多いため、親の虐待を誘発する原因になると述べた。
特に、学童期の後半から始まり思春期に至っては、第二次性徴を迎え、心身ともに大きく変わる時期である。変化に対して適応することの困難性をもちやすいPDDの子どもは、強迫的傾向や心理的動揺が目立ち、身体面では、ストレスに対して拒食反応を示すようなこともある。現在、特に問題となっているのは、思春期になってPDDと診断されるケースである。このようなケースの場合、家族がこれまで子どもが抱えている困難さを理解して対応しきれていないことから、PDDの子どもは、家族からの理解を得られず被害的になりやすい。また、学校生活でも子どもが抱えている困難さを理解して対応できないクラスメイトや教員の言動により、同じ様なことが引き起こされてしまうことがある。横井(2003)は、思春期のPDDの子どもの二次障害として引き起こされる適応障害(不登校)の問題を指摘した。このような思春期の現状は、主に関わる親にとっては、忍耐やかかわりの工夫が必要となる大変な時期であり(中沢、2003)、親を支える支援が必要である。
また、三原ら(2004)は、自閉症のきょうだいは、他の知的障害者のきょうだいよりも同胞の問題行動に悩み、精神的負担が大きいと報告している。このように、PDDの子ども自身の問題だけでなく、家族員の健康問題にも波及している現状から、PDDの子どもを含め家族の健康としての現状をより詳しく把握する必要があると考えた。
家族の健康の概念については、WHO(World Health Organization)が、1974年に「家族の健康とは、健康の促進に関与する第1次的な集団としての家族の機能状態を意味する」として家族機能の状態で示している。
そこで、家族の健康について家族機能も含めて先行文献から検討をすることで学童期・思春期のPDDの子どもを支える家族の健康についての現状を把握できると考える。また、同時にPDDに関する看護研究の動向についても確認することは、今後必要な看護研究についての示唆を得ることができると考える。
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