特集 睡眠薬のトリセツ 今すぐ使える不眠治療の処方箋
不眠に伴う課題の糸口を薬学的視点から探る① 睡眠薬ポリファーマシーに至る処方カスケードを阻止せよ!
村川 公央
1
1岡山大学病院 薬剤部
pp.178-182
発行日 2023年2月5日
Published Date 2023/2/5
DOI https://doi.org/10.15104/ph.2023020005
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不眠症は実臨床において訴えの多い臨床症状の一つである.わが国では5人に1人が不眠症を有しており,20人に1人の割合で睡眠薬が処方されている1).特に高齢者でその傾向が高く,睡眠薬や抗不安薬が3剤以上処方されている患者も少なくないとされる2).
近年,不眠症の治療薬としては,ベンゾジアゼピン受容体作動薬(非ベンゾジアゼピン受容体作動薬を含む.以下BZRA)が主体的に処方されている3).BZRAは,これまで使用されてきたバルビツール酸系睡眠薬(非バルビツール酸系睡眠薬を含む)と比較して呼吸器系や循環器系へ安全性が高く,さらに睡眠効果の発現が速やかであることから診療科を問わず不眠症の治療に汎用されている.しかしその一方で,ふらつき,転倒,せん妄,さらには認知機能の悪化などのさまざまな問題点がクローズアップされてきている.特に高齢者では,生理機能低下や多剤併用の観点からBZRAの使用が疑問視されている.高齢者へのBZRA投与によるリスクについては『高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)』や『高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015』にも記述されており,近年ではBZRAの病棟定数配置や不眠時の約束指示について見直す医療機関が増え,代替薬としてメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬が選択される機会が増えつつある.また,BZRAを含む向精神薬などの多剤併用や長期処方を抑止する目的として診療報酬上での減算規定が設けられ,BZRAの適正使用がさらに広がりをみせている.
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