特集 睡眠薬のトリセツ 今すぐ使える不眠治療の処方箋
不眠に伴う課題の糸口を薬学的視点から探る② 病棟でみる不眠とせん妄の負のスパイラルを阻止せよ!
江角 悟
1
1神戸学院大学 薬学部
pp.183-187
発行日 2023年2月5日
Published Date 2023/2/5
DOI https://doi.org/10.15104/ph.2023020006
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不眠が生じる背景として,「3Pモデル」が考えられている(図).すなわち,不眠の発症には,準備因子(predisposing factor),誘発因子(precipitating factor)および遷延化因子(perpetuating factor)が関与しているとされる.準備因子は単独では不眠の原因にならないが,誘発因子が加わることで一過性の不眠が現れる.通常,誘発因子が取り除かれることで不眠は改善するが,不眠により遷延化因子が生じた場合,不眠が慢性化する.
入院した患者の多くは慣れない病院での生活や疾患の治療に対する不安を抱え,一般的な就寝時刻より早い21時頃での消灯など,睡眠スケジュールが乱れやすいため,必然的に不眠が生じやすい.このような患者の一時的な不眠に対し,従来からベンゾジアゼピン受容体に作用するベンゾジアゼピン系および非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が広く用いられてきた.
ベンゾジアゼピン受容体に作用する睡眠薬〔ベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRA)〕は,明確かつ即効性の高い睡眠作用をもつことから広く用いられている.実際に,少し古いデータではあるが,主に精神科・心療内科と比較し一般診療科の方が多数の患者に処方していることが報告されている1).特に,睡眠薬の処方率は加齢および合併身体疾患数に伴って増加する.したがって,入院と睡眠薬の関連性については,入院に関する環境変化やストレスによる新規の睡眠薬服用に加え,入院の背景にある加齢や身体疾患(特に生活習慣病)の合併によって,入院時にすでに睡眠薬を服用している場合も多い.
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