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日本での不眠症の有病率は,一般成人の21%と報告されている1).不眠の発症は年齢とともに増加し,60歳以上では約3人に1人が睡眠問題で悩んでおり,非常に身近な疾患で誰もが罹患するリスクがある2).
睡眠充足の目安は,おおむね6~7時間前後とされているが,日本人成人の平均的な睡眠時間は6.6時間であり3),睡眠時間が5時間以上8時間未満の人が全体の86.3%を占めている4).
睡眠は身体と精神の疲労を回復する重要な自律機能で,QOLに大きく影響する重要な因子である.そのため,睡眠の障害は国民の健康を守るために,しっかりと対峙しなくてはいけない課題である.厚生労働省健康局は『健康づくりのための睡眠指針2014』を作成し,睡眠の健全化の意義を示している(表)5).睡眠障害への早期の介入は,身体疾患や精神疾患の発症リスクを軽減し,自殺リスクを低下させる可能性があり,また日常の活動を亢進するなどのさまざまなメリットをもたらす.以前は,「眠れなくても死にはしない」などの考え方がまん延し,不眠に対する治療が軽視されてきたこともあったが,不眠から派生する影響は非常に大きいといえる.
不眠から陥る身体の変化としては肥満がある.そこから派生して糖尿病,高血圧,脂質異常症が発生し,さらに心血管疾患が引き起こされる(図1)6).これらの病態は,不眠に由来する摂食ホルモンの変動(レプチン低下,グレリン増加)による食欲の亢進,交感神経系の亢進,コルチゾールの増加などによるものと考えられている.
また,不眠は精神疾患を引き起こすことや,それらの前駆症状となっている場合があることにも注意が必要である.うつ病,双極性障害,不安障害,統合失調症など,精神疾患の初期症状に不眠が存在していることが多く,睡眠の悪化により精神疾患に陥っていくこともある.
睡眠がもたらす影響を鑑みると,しっかりとした適正な治療が重要で,薬剤師にとっては,薬物治療,特に睡眠薬に関する適切な管理指導が求められる.
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