せん妄状態で再入院したCOVID-19高齢患者の意思を支え“その人らしさ”を取り戻す看護

Nursing Care of Supporting Her Will and Restoring Her Personality for an Older Patient with COVID-19 Who Was Readmitted to the Hospital in a Delirium State

抄録

　本稿は，胸椎圧迫骨折後の機能訓練目的で一般病院入院中にCOVID-19に感染し，重点医療機関の間で3度の転院を余儀なくされた高齢患者が，軽症〜中等症対応の重点医療機関での支援により，せん妄からの回復とともに“その人らしさ”を取り戻すことができた事例報告である．患者が“その人らしさ”を取り戻した看護は，看護師間で患者の生活像および回復像をイメージして目標を共有したこと，感染管理と本人の意思を尊重するケアの調和をはかるケア体制が構築できたこと，リアリティ・オリエンテーションや環境調整，孤独感や不安感への対応，多職種連携のもとで看護師による患者のニーズ充足などのケアであった．これらは，COVID-19病棟という特殊な環境下でも患者の力を信じる看護師による，患者の意思を尊重する高い倫理観と退院後の生活も支えたいという強い責任感に基づく高度な看護実践と考える．本看護実践は，人間らしく，“その人らしく”過ごすための権利と尊厳を守る実践であった．