ピンチをチャンスへ

Tough Times Bring Opportunity

　2020年1月に国内で初の新型コロナウイルス感染症（COVID-19）が確認されて以来，感染拡大の大きな波を何度も繰り返し，常に医療の現場では緊迫した状況が続いている．COVID-19という未知のウイルスに対応していくということで，当初はどのような対応がベストなのかもわからず，自分自身が感染するのではないかという不安を抱えながら，従来のエビデンスに基づく知識と経験から対応を模索し，とにかく感染対策を最優先にしたケアが行われてきた．

　COVID-19は，高齢者の生活にもさまざまな影響を及ぼしてきた．感染による重症化リスクが高い高齢者は感染することを恐れ，家の中に閉じこもり，フレイルが進行，受診控えから基礎疾患が悪化するなど健康面への影響がみられた．また，活動を制限することで生きる楽しみであった趣味活動が制限され，不安や抑うつ，認知機能の低下などもみられた．病院や施設では感染対策から面会制限が行われ，スタッフは常にマスクを着用し，飛沫リスクのあるケア時にはPPE（個人防護具）を装着，声が聞き取りにくい，表情がわからないなどコミュニケーションのとりづらさから高齢者に心の距離も感じさせる状況になった．