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1.認知症高齢者の薬物療法における課題
65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると,2012年は認知症患者数が462万人であり,65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)が認知症であるとされた.年齢別の認知症の有病率は,年齢が上がるとともに高くなり,75〜79歳で13.6%,80〜84歳では21.8%,85〜89歳になると41.4%となることが推計されている(朝田ら,2013).また,2025年には約700万人,すなわち5人に1人が認知症になると見込まれている(内閣府,2016).
アルツハイマー病やレビー小体型認知症の人の認知機能障害の進行を抑制するために,抗認知症薬が処方される.認知症高齢者には糖尿病や高血圧,高脂血症,心不全などの疾患を罹患している人も多いので,それらの疾患を薬物療法によって治療することも行われている.しかし,認知症高齢者の薬物療法では,近時記憶障害をはじめとする認知機能障害によって,飲みすぎや飲み忘れ,服薬の拒否が起こりやすく,また自分の薬であることを認識することができずに処方どおりに服薬することがむずかしくなることも多い.主治医から処方された薬が自宅の押入れなどに大量に残っているということも多い.服薬動作の途中で認知症高齢者が錠剤を落としてしまったり,いったん口腔内に入れた薬剤を認知症高齢者が吐き出してしまったりすることも起こりやすい.さらに,高齢者では副作用が出現しやすいが,認知症高齢者は副作用症状を適切な言葉で表現することがむずかしいため,普段とは異なる言葉や行動が観察されても,その原因が副作用症状であることに家族や看護師,ホームヘルパーなどが気づかないこともある.
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