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1.認知症を予防する人工知能技術の開発を目指して
近年,人工知能技術が進歩し,コンピュータが人間の知能を超えるというシンギュラリティとよばれるSF小説のような現象が,現実味を帯びてきたとの議論がある(レイ・カーツワイル,2007).しかしながら,人間は急には進化しないばかりか,医療の進歩により長生きする人が増えた結果,日常生活や社会生活に支障をきたすレベルまで知能が低下する認知症にかかる人が増え,人間の知能のほうが危機にさらされている状況にある.実際,筆者の祖母も認知症にかかり,知能が失われていくさまを目の当たりにし衝撃を受けた.人間の知能を超える技術が実現可能であるならば,人間の知能が低下しないよう支援する技術,もしくは人間の知能が低下しても生活に支障をきたさないよう支援する技術を実現することが可能であるはずである.人類にとってこれらの技術は不可欠であると考え,人間の知能の仕組みに基づいて認知症を予防する人工知能技術の開発に取り組んでいる(大武,2009;大武,2013;大武,2015).
認知症の発症を防ぐには,認知症の発症リスクを高める危険因子を取り除く方法と,認知症の発症リスクを抑える抑制因子を生活のなかに積極的に取り入れる方法とがある.抑制因子には,食事,運動,知的活動,社会的交流が挙げられる(矢冨ら,2008).これまで,観察研究で抑制因子が見つかり,そこから介入研究がデザインされるというステップで研究が進められてきた.食事,運動,知的活動については,観察研究に基づく介入研究が行われてきたが,社会的交流については,観察研究があるものの介入研究は未開拓である.認知症発症の抑制につながる効果的な社会的交流自体が明らかでないからである.筆者は,社会的交流の基盤として会話に着目し,介入研究の基盤となる会話支援技術の開発を進めている.具体的には,以下の3つの課題に取り組んでいる.
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