日本老年看護学会第3回学術集会特集 シンポジウム
老年者に起こりやすい問題とケア研究の方向性
失禁のケアに関する研究について
小松 浩子
1
Hiroko Komatsu
1
1聖路加看護大学
1St Luke's College of Nursing
pp.24-29
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
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はじめに
私は定期的に東京と福島県のいわき市にある尿失禁クリニックで尿失禁ケアにあたっている.秋から冬にかけての時期に一番心配するのは,気温の変化である.東北地方の冬の訪れは足早に突然やってくるので,木枯らしの吹いた週にクリニックを訪れると患者の数がうんと増えているし,皆やや気落ちした面もちで診察室に入っていらっしゃる.気温の変化をちゃんと察知して下着やズボンをはけるだけはいて完全防備しても,それをようやく脱いで診察台にあがると失禁パッドがぐっしょり濡れていることはよくあることだ.そして,それと同時にそうした高齢者の四肢を触れてみてその冷たさに驚くこともたびたびある.また,寒さに対して完全武装したためにいざおしっこと思う時には,寒さで手先がうまく使えなくて,後少しのところでちびってしまうという声もよく耳にする.こうした会話ができるようなところまできている方に対しては,尿漏れに対してなんらかの手だてを一緒に考えることができる糸口を摑めているわけでもある.いわき市のクリニックには,老健施設も併設しているので,痴呆や麻痺のある高齢者の尿失禁ケアにも相談にのるわけだが,そうたやすくは尿失禁改善の手だてを見出すことができないのが現状である.
高齢者の排泄ケアには,さまざまな難題が山積みされている.それらの山をひとつずつ乗り越えるための研究と実践の試みを提示し,今後のケアの方向性について探ってみたい.
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