日本老年看護学会第3回学術集会特集 シンポジウム
老年者に起こりやすい問題とケア研究の方向性
転倒・骨折の予防に関する研究について
鈴木 みずえ
1
Mizue Suzuki
1
1浜松医科大学医学部看護学科
1Hamamatsu University School of Nursing
pp.16-23
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
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はじめに
高齢者は容易に転倒しやすく,高齢になるほど転倒後に歩行能力を失い,歩行障害をきたしたり,ADL低下のきっかけとなる.2本足で直立歩行している人間にとって転びやすくなったということは移動能力が脅かされつつあるという兆候でもある.高齢者の転倒は骨折などの身体的外傷を受けるばかりでなく,自立生活に対する自信の喪失体験でもあり,心理的側面にも影響を及ぼし,その後の活動性を制限してしまう場合もある.特に比較的自立度が高く,移乗・移動動作の介助のレベルの高齢者に転倒が頻発しやすく,心身を不活発にさせ,QOLを脅かし,寝たきりへと移行させているような状況も多い.また,転倒の頻発する高齢者は同時に他の老年期に起こりやすい問題,失禁,ADL低下,痴呆などの問題も合併している.
近年,高齢者に多い大腿骨頸部骨折の原因のほとんどが転倒であることから,わが国でも高齢者の転倒の危険因子(リスク)に関する研究が進められてきた.しかし,これらの解明された危険因子がケアと直接結びつかなかったり,あるいはケアに関する積極的な介入研究が少ないなどの研究上の課題が見受けられる.
本稿では,これらの課題を踏まえ高齢者ケアにおける転倒・骨折研究のケア研究としてのアプローチを明確にし,これらの課題を明らかにしていきたい.そのために,最初に転倒・骨折のケア研究の視点と意義をまとめ,次に浜松市において実施した転倒予防に関する介入研究の試みを紹介後,今後の転倒予防の研究の方向性について考えていきたい.
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