焦点
痴呆のある高齢の人々の自己決定を支える看護
永田 久美子
1
Kumiko Nagata
1
1東京都老人総合研究所看護学部門
1Nursing Research, Tokyo Metorpolitan Institute of Gerontology
pp.17-24
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
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Ⅰ.痴呆のある高齢の人々と看護
「痴呆」はひとつの病態を意味する医学上の概念であり,看護の対象は,「痴呆」ではなく,「痴呆のために様々な生活障害を抱えながら人生の終盤期を生きつつあるその人」である.そして看護の目標は,「痴呆の病因やレベルによらず,その人が安らかに,また自分らしく生き生きと暮らしていけることを目指して,その人の生命力と可能性を最大限に引き出し支えること」にある.痴呆自体は治らずとも,その人らしさや安らかさを支える看護は最期の時まで続く.痴呆のある高齢の人々(以下,痴呆の高齢者)に対する従来の集団管理的な処遇のあり方を脱して,人間性尊重の理念を貫く新しい看護の実践が各地で始まってきている1)2)3).
とはいえ,痴呆の高齢者とその援助者を支える仕組が質量とも著しく立ち遅れている現状では,痴呆の「人」を看護するには大きな困難がつきまとう.看護ができずに,痴呆症状への対応や業務の処理に追われて,看護者が,ジレンマに苦しみ,心身ともに消耗させている状況も決して少なくない1)4).
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