Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
看護方式は、看護専門職が継続的に入院患者への質の高い看護サービスを提供する仕組みとして欠かせない。櫻井ら(2015)は、看護方式を「病院看護における組織が対象者に対して看護サービスを提供するためのしくみ」と定義している。看護方式には、固定チーム・ナーシング方式やプライマリー・ナーシング方式、モジュール型継続受け持ち方式、機能別看護方式などがある(石山,2015;渡辺,2013)。
我が国の看護方式は、診療報酬の影響を受けながらも、看護専門職として質の高い看護サービスを提供するために変化してきた(櫻井ら,2015)。近年、新しい方式として福井大学医学部附属病院の開発したパートナーシップ・ナーシング・システム(PNS®)(以下PNSとする)が多くの病院で採用されている。PNSは、「看護師が安全で質の高い看護を共に提供することを目的に、2人の看護師が良きパートナーとして対等な立場で互いの特性を生かし、相互に補完し協力し合って、毎日の看護ケアをはじめ、委員会活動、病棟内の係の仕事に至るまで、1年を通じて活動し、その成果と責任を共有する看護方式(橘,2015)」と定義される。2009年に同病院消化器外科病棟で導入され、2011年から全病棟で本格的な運用を開始した(橘,2014)。その特徴は、パートナーシップ・マインドの3つの心、「自立・自助の心」・「与える心」・「複眼の心」と、3つの要素「尊重」・「信頼」・「慮る」である(橘,2014)。橘(2014)はPNSを導入することで、均一化された看護サービスの提供や看護の安心安楽な提供、インシデント・アクシデントの減少による看護の安全性向上、残業時間の減少、ナースコールの減少、高い教育効果による人材育成の促進(On the Job Training効果、以下OJT効果とする)などの効果を期待できると述べている。
しかしながら、丸岡ら(2015)も述べるように、PNSの歴史は浅く、その研究目的や方法論、導入による効果・課題点、これまでに行われた研究の手法・デザインなどについての課題(以下研究課題とする)などの科学的な検証は十分に明らかにされていない。看護方式は、提供される看護サービスの質や看護師の労務管理にも影響する。そのため、PNSに関する研究(以下PNS研究とする)の内容を調査・概観し、研究課題を考察することは、今後のPNS研究の発展・促進へとつながり、看護の質向上やより良い労務管理の一助となる可能性がある。
そこで本研究は、今までのPNS研究の研究内容を調査・概観し、研究課題や方向性を考察することを目的とした。
Copyright © 2017, Japan Society of Nursing and Health Care All rights reserved.