投稿論文 原著論文
自閉スペクトラム症の人は芸術活動でどのような主観的体験を得ているか 自己理解に至るプロセスに着目して
石川 千春
1
1東京大学 大学院教育学研究科
キーワード:
人間活動
,
感情
,
芸術
,
コミュニケーション
,
自己概念
,
無意識
,
社会環境
,
半構成的面接
,
グラウンデッド・セオリー・アプローチ
,
自閉症スペクトラム障害
,
自信
,
体験学習
,
他者
Keyword:
Unconscious, Psychology
,
Communication
,
Emotions
,
Art
,
Self Concept
,
Autism Spectrum Disorder
,
Human Activities
,
Social Environment
,
Grounded Theory
pp.390-402
発行日 2022年5月10日
Published Date 2022/5/10
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本研究は、自己理解に困難を抱えるとされる自閉スペクトラム症の人が、非言語的手法である芸術活動によってどのような主観的体験をなし、自己理解を促進させうるかを明らかにすることを目的とした。芸術活動として描画を日常的に継続して行う成人のASD者11名に半構造化面接を実施し、グラウンデッド・セオリー・アプローチを援用して質的分析を行った。その結果、24のカテゴリが生成され、それらは【感情体験】【外的体験】【内面の深まり】という3つの段階を経て、自己理解へと至る可能性が明らかとなった。そのプロセスにおいては、気分の向上、他者交流の増加が重要な要素であると見出された。なかでも他者交流の増加は、認知面に変化を及ぼし、他者参照能力や自己理解が促進されることが示唆された。ASD者にとって、継続的な芸術活動は、絵を介して他者との関係構築のきっかけを生み、自分自身への理解を深める可能性が考えられる。
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