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Ⅰ.緒言
看護基礎教育において、臨地実習は、講義、演習と並び重要な位置を占めている。実習は、学生、教員、教材の3要件より成立するが、基礎教育課程全体では、実習指導に専任の教員が存在する教育機関は少ないとされる(日本看護協会,1993)。そのため臨床の看護師である実習指導者(以下「指導者」とする)がこの役割を担っている。しかし指導者の中には、患者の看護を提供する看護職者としては高い能力を持つにもかかわらず、不全感に陥り、職業が継続できないという状況に身をおいているものがあるとの報告や(杉森,2004)、指導者の抱える様々な問題も指摘されている(高木,2001)。
実習指導は青年期にある学生を育てる営みである。この体験を生涯にわたる発達の観点でみると、Erikson(1977)が示した8つの段階の「心理社会的危機」のうち、成年期の危機である「生殖性」に相当すると考えられる。「生殖性」とは、子どもを生み育てるという狭義でなく、次の世代を確立させ導くことへの関心であるとされる。「生殖性」は青年期の危機の「アイデンティティ(自己同一性)」と成年前期の危機の「親密性」の次の段階にあたる。「アイデンティティ」の重要な要素は職業の選択であり、「親密性」は自己の同一性を他人のそれと融合させ、親密な関係をつくることとされる。また生涯発達における「危機」とは、致命的とか、破局という意味ではなく、葛藤をもたらす転機・分岐点という意味で、葛藤を乗り切り、危機を克服するたびに人間は成長する(Erikson,1973)と考えられている。先行研究では、看護者の生涯発達上の「危機的体験」は約半数が仕事上の体験で、新人や部下を育てる体験も含まれていた。残り半数の体験も仕事と何らかの関連があった(中垣,2010)。看護者では生涯発達上の危機と仕事上の体験との関連が強いと考えられる。
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