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Ⅰ.諸言
わが国の高齢者人口は急増し、2015年には高齢化率が26.9%になると予想されている(財団法人厚生統計会,2008)。介護保険施行から10年が経過し、施設から在宅への転換が行われているが、高齢者施設数は年々増加の傾向にある(厚生労働省,2006)。介護老人保健施設(以下、老健)は病院と在宅の中間施設として位置づけられ、看護師は高齢者のQOLの維持・向上と在宅復帰を目標に日々看護実践を行っている。しかし、老健で生活する高齢者は何らかの疾患を有し、医療処置が必要な者も多く、時には救急処置を必要とすることもある。老健は、病院と比較すると看護師の人数が少なく、夜間に医師が常駐していないため看護師の急変時の対応が、高齢者の予後を左右することになる。したがって、老健の看護師は、高齢者の急変時における専門的な知識と判断・技術力が求められる。
老健入所者の急変時の対応に関する先行研究では、高齢者施設から救急外来に搬送されたときの高齢者の心拍再開は、急変時の目撃者の存在や基本的なCPRの実施が関連し(太田ら,2001)、老健における急変時の現状に関しては、高齢者の急変の発見者は介護職が一番多いこと(白石ら,2000)が明らかになっている。また、施設から救命センターを経由して入院した高齢者の19%は専門的治療の必要があり(Finucane、et al,2000)、老健における看護師の急変時の適切なアセスメントの必要性がうかがえる。老健に勤務する看護師を対象にした救急処置に関する研修会のニーズと研修会に関する調査(三浦ら,2006)では、研修会終了後には、研修会で習得した知識や技術の活用、職場での救急体制の整備に加えて、組織での取り組みもみられていたと報告されている。このように、老健の看護師を対象にした急変時の対応に関する研修会の実施は、急変時のケアの質の向上、すなわち、老健における高齢者のQOLの維持にもつながるといえる。しかし、老健に勤務する看護師は、業務に関する自己評価において、約3割弱の看護師が緊急時の対応や処置に関する知識や技術が不十分であると感じている(渡辺ら,2006)。また、高齢者の重症化や認知症高齢者の増加(河野,2005)から、看護師の観察力や判断能力が必要であり、よりいっそう看護の専門性が要求される。そのためには、老健に勤務する看護師に対して、他職種との連携や対象者が高齢者であるという老健の独自性を活かした急変時の対応に関する研修会プログラムが必要である。
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