Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
Ⅰ.緒言
2型糖尿病は生活習慣と関係して発症しており、食事療法、運動療法、薬物療法を日常生活の中に組み入れていくことが重要である。特に食事療法は、全ての糖尿病患者に必須であり、食事療法なくしてはどのような糖尿病患者も自己管理は不可能である(山東,1995)。適切な食事療法の継続は合併症を予防し、すでに合併している場合には進行を遅らせることにつながる(山田,2000)。したがって、患者自身が自己管理を継続できることをめざした患者教育の意義は大きい(坂井,1996)。しかし、実際には教育目的で入院した患者が退院後に自己管理を継続できずに状態が悪化する者も少なくない。河口氏(1996,2001)は、食事指導を受けた糖尿病患者の実行度を経時的に研究し、良好な食事療法を実行する者の割合は1か月後73%、3か月後57%、6か月後37%、1年後21%、2年後10%と減少していたことを報告している。このことから食事療法を継続することがいかに困難であるかが分かる。
自己管理に影響を及ぼす要因については、性・年齢等の属性(木下,2002;中平ら,1996)、自己効力感(安酸ら,1998;木下,2002;中平ら,1996;水野ら,1994)、家族支援(中村,1996;佐藤,2004)と関連があることが報告されている(木下,2002;中平ら,1996)。しかし、患者が自己管理できないという背景には、患者側の要因だけではなく、患者のレディネスと看護師が行う教育内容・方法にズレが生じているという場合もあると思われる。レディネスとは教育を受ける学習者の知的・情動的な準備状態であり、教育は患者のレディネスに合っていることが必要である(中津川,2007)。成人期における患者のレディネスは、本人が経験している生活上の問題や社会的な課題については高いが、当面自分に関係がないと思える問題についてのレディネスは低いといわれている(中津川,2007)。成人期にある患者は社会の一員としての役割や責任が重くなり、糖尿病の食事療法を生活の中に組み込むことは容易ではないと思われる。そこで、本稿では、人間の認識と情動が行動に作用していることを踏まえ(安達,2000)、自己管理行動に患者の経験から得た認識と情動がどのように関係しているかを明らかにすれば、成人期の糖尿病患者のレディネスに合った教育上の示唆を得ることができるのではないかと考えた。また、河口ら(2000)は一人一人の患者に現実に起こっている生活の累積を分析する必要性を述べており、清水(2001)は自己管理に患者がどんな思いを抱いているかを捉えることで自己管理継続の手がかりが得られることを述べていることから、患者が生活の場で経験してきた食事の自己管理行動に対する認識と情動を質的帰納的に分析することとした。
Copyright © 2009, Japan Society of Nursing and Health Care All rights reserved.