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Ⅰ はじめに
日本における災害看護実践の歴史は、1891年の濃尾大地震まで遡ることができ(神原、2010)、災害時の看護活動は救護看護婦や社会看護婦養成のきっかけとなっている(山本、2005)。
研究と実践は循環する関係であり、実践の課題を研究することにより理論が生まれ、それが実践の質を高めていく。災害看護分野の研究について、医中誌Webにてキーワードを「災害看護」とし、絞り込み条件として論文種類を「原著論文」、収載誌発行年を「2007-2016」として検索したところ、410編(2017年9月2日現在)であった。他の分野の成人看護学とクリティカル看護学では、それぞれ、キーワードを「成人看護」、「クリティカル看 護」とし絞り込み条件を同様にして検索したところ2151編と1093編であり、災害看護はこれらと比較し論文数が少ない状況である。その理由には、災害看護学の学問としての歴史が浅いことが考えられる。災害は日本をはじめ世界各地で頻発しており、災害看護学研究が推進されることで、人々の安全で安心な暮らしに大きく貢献できるものと考えられる。
2010年の先行研究(神原、2010)で、今後災害看護研究に必要な研究領域として「災害への備え」、「災害時の連携システム」、「被災時、被災後の要支援者支援」、「被災者(支援者を含む)のメンタルヘルス」、「災害サイクル別看護」、「国際災害看護」、「特殊・多発災害時の看護」、「災害看護学構築(基礎教育)」が指摘されている。2010年以降、多くの災害が発生し、並行して災害看護学研究も盛んになってきている。現段階の災害看護学の推移や方向性を明らかにするとともに、現在の災害看護学研究の課題は何かを検討することは、今後の災害看護学研究の発展に資すると考える。
日本災害看護学会は日本で唯一の災害看護を専門領域とする学術団体として、阪神淡路大震災を契機に1999年に設立され、日本学術会議協力学術研究団体として認められている。過去10年間の災害看護学に関する原著論文410件のうち74件は、日本災害看護学会誌(Journal of Japan Society of Disaster Nursing:以下JJSDN)に掲載されている。そこで、本研究は日本の災害看護学研究の状況をJJSDNからとらえることとした。
本研究の目的は、日本災害看護学会が設立された1999年から2015年までの17年間の災害看護学研究の現状について、日本災害看護学会誌に掲載された論文をもとに記述し、今後の災害看護学研究の課題を検討することである。
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