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Ⅰ.はじめに
がんは,長年不治の病として国民の生命や健康,生活を脅かし続けてきた疾病であり,我が国において1981年より死亡原因の第1位を占めている.これに対し1984年に厚生省,文部省,科学技術庁の3省庁は共同事業として「対がん10ヵ年総合戦略」を策定し,政策レベルでがんに対する様々な研究事業を進めてきた1).
これらのがん医療政策や,がんは死亡率が高く身体,心理・社会的,霊的苦痛を伴うという特徴から看護の果たす役割が大きいこと,国外でのがん看護の発展などの影響を受け,我が国では1987年にがん看護に関する研究・教育および実践の発展の向上に努めることを目的として日本がん看護学会が発足した2).そして,本学会は1997年の第11回学術集会で10周年を迎えた.
この10年間がん医療は,診断や治療技術の進歩,生命や生活の「量から質」という価値の転換,症状緩和に対する積極的な取り組み,インフォームド・コンセントの普及に伴う患者の自己決定権の尊重など様々な側面においてめざましい発展を遂げてきた.
このような時代の趨勢の中でがん看護においてもつぎのような大きな変化がみられた.本学会が内容の充実をめざし努力してきた結果,会員の増加とともに研究発表数も増え,現在では会員数2,000人を超す大きな学会として成長したこと,1996年には日本学術会議の学術研究団体に登録されるという前進があったこと,また同年に専門看護師制度が作られ,がん看護領域において4名のがん専門看護師が認定されたことなどである.
看護婦はこれまでにがん医療を担う専門職として大きな役割を果たしてきたが,今後さらにがん医療において科学技術のより一層の進歩とともに様々な変化が予想され,がん看護の果たす役割が益々期待されると思われる.
そこで,今後の日本のがん看護における研究,実践,教育の方向性の示唆を得るために,日本がん看護学会における過去10年間のがん看護研究の動向を明らかにすることを目的として調査を行った.
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