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Ⅰ.はじめに
がん化学療法で用いる抗がん剤などは曝露により医療従事者に危険をもたらす薬(Hazardous Drugs;HD)として米国の公的機関であるNIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health)は,取り扱いの注意喚起を行っている(NIOSH Alert)1).また,米国では薬剤師,看護師などの職能団体,学術団体がそれぞれガイドラインを作成し,普及のための研修を実施している.
日本においては,調製時の曝露対策に関するガイドライン2)3)はこれまでにも発行されていたが,曝露の機会は調製時に限らない.そこで,2014年1月に日本がん看護学会からの発案で,日本臨床腫瘍学会,日本臨床腫瘍薬学会の3学会合同ガイドライン委員会が発足し,2015年7月に「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」の発行に至った4).
ガイドラインの作成を開始した2014年5月,日本において公的に初めての曝露に対する通知である,厚生労働省労働基準局安全衛生部・化学物質対策課長通知「発がん性等を有する化学物質を含有する抗がん剤等に対するばく露防止対策について」が発出された5).6月に曝露に対する医療従事者の協議会が発足した6).2015年には,医療の質・安全学会医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”における行動目標Wとして「医療従事者を健康被害からまもる,(1)抗がん剤曝露のない職場環境を実現する」が採択された7).このように,2014〜2015年は,抗がん剤曝露対策が進展した年でもあり,曝露に関する調査を日本がん看護学会が会員に対して実施することはこれらの動きの浸透前調査としても意義が高い.
本研究は,「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」発行前の日本における看護師の曝露対策の実態を明らかにすることが目的である.この結果を踏まえ,今後がん薬物療法に伴う職業性曝露防止対策の向上に向けたガイドラインの普及活動の基礎資料とする.
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