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I.緒言
頭頸部がんの治療では,手術を含めた集学的治療が普及しているが,単独放射線治療や化学放射線同時併用療法が選択されることも多い 1).
頭頸部への放射線治療において,皮膚に近いところに病巣があり,また,頭頸部が非常に複雑な形状をしていることより放射線の線量分布は不均質となり皮膚炎,咽頭粘膜炎などの障害は避けることができず 2),放射線皮膚炎は頻度が高い有害事象である.
放射線照射によって基底細胞の分裂が阻害され,基底層から角質層へと至る上皮ターンオーバーが障害されることにより,皮膚の表面を覆う角質層の減少・消失に腺細胞の分泌障害も重なり,水分保持や体温調節,抗菌,免疫,感覚といった皮膚の主要な機能が障害される 3).皮膚が皮膚本来の正常な機能を発揮するには,皮膚水分量の保持が重要であり,これには皮膚外層の厚さ20μm程度の角質水分量が大きく寄与している 4).放射線皮膚障害の予防には角質水分量を保持することが重要である.
放射線皮膚炎に対しては,CTCAEのグレードに応じた対応が必要とされている.Grade 1は,わずかな紅斑 や乾燥落屑であり 5),放射線皮膚炎の初期症状は乾燥の要素が大きい.乾燥した皮膚はダメージを受けやすい 6)とされている.
皮膚炎が重篤化すると,予定量の照射が行えなくなる場合があるため,皮膚炎の予防は重要である.放射線皮膚炎予防については,さまざまな研究が積み上げられてきた.洗浄については,洗浄が有用であるという報告がある 7).頭頸部領域では,「皮膚炎管理プログラムを用いた頭頸部放射線治療患者管理前向き介入臨床第II相試験(DeCop)」において,放射線皮膚炎の予防に保湿と洗浄が有効であることが明らかとされている 8).保湿に焦点をおいたものとして,保湿クリームを使用することで頭頸部照射の放射線皮膚炎の自覚症状の割合を低下させ,症状発現時期を遅延させることができたとした報告がある 9).
また,放射線皮膚炎の予防ケアに関しては,患者のセルフケアに頼るところが大きいとされており 9),がん放射線療法看護の質評価指標開発の研究においても,セルフケアを高める支援は重要視されている 10).放射線皮膚炎の予防は,治療開始とともに保湿・保護を行うことが効果的であり 9),治療開始時より保清と保湿を行うことが望ましい.しかし,実際には治療開始時は保清に関する指導を中心に行っている施設が多いという報告があり 11),治療開始時より保湿への対処は十分に行えていない現状がある.現在,多種販売されている保湿剤入り洗浄剤は,保清と同時に保湿を行うこができるとしている.外来通院での放射線治療も行われており,外来治療では,患者のセルフケアが重要となるため,保湿剤が配合された洗浄剤を使用することは放射線治療にともなう倦怠感などを感じる患者のセルフケアを少しでも容易にすることにつながるのではないかと思われる.
放射線皮膚炎の予防では,機械的刺激からの保護も重要である 12).頭頸部は,襟など衣服の刺激を受けやすい部位であることより,刺激を避けるため,洗浄時においても皮膚への機械的刺激が少ない洗浄剤を選択する必要がある.
今回,頭頸部がんの放射線皮膚炎の予防のため,保湿効果が持続し,洗浄時に皮膚に与える機械的刺激が少ない保湿剤入り洗浄剤を検討する必要があると考えた.
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