Japanese
English
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
I.諸言
がん医療の発展により,がん患者の生存期間が延長し,がんの治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが増加している.がんサバイバーとは,The National Coalition for Cancer Survivorship(NCCS)の定義では「がんと診断されたときから人生の最後までサバイバーである」1)と述べられており,「がんとともに人生を生きる人」を意味している.がんサバイバーは,がんの診断とともに,強い死の恐怖や脅威を感じ身体症状に加え,精神的にも苦痛が生じている.がんサバイバーのかかえる苦痛は,痛みや痛み以外の症状,ADLの低下などの身体的苦痛のほか,不安や苛立ちなど精神的苦痛,役割の喪失や経済的問題などの社会的苦痛,さらに「生きている意味がない」「なぜ私にばかりこんなことが起こるのか」など意味への問いや価値の喪失によるスピリチュアルペインの全人的に及ぶ.
ケアカフェの先進国のイギリスでは,1975年にデイホスピスとしてSheffieldのSt. Luke's Hospiceで始まり,2015年にはデイホスピスは283施設となり,多様なプログラムが開発されている.日本では,2000年に広島医師会などが中心となった緩和デイケア,2008年に島根県にサロンが開催され,愛知県や岐阜県,九州などでもケアカフェが開催されるようになった.大学キャンパス内では,名古屋大学の「緩和デイケア・サロン」2),埼玉県立大学で「緩和ケアサロン」3)が開催されている.このように,デイホスピスやサロンなどの活動が増えており,サバイバーに対する効果の報告が散見され,また,施設の協力不足,予算や人材の不足などの課題も示唆されている.
一方,がんは重い病気,死を連想させるものとしてのイメージが,がん看護を実践する医療者の基盤に影響すると思われる.看護学生のイメージと学習への影響について,交野ら 4)は,イメージの相違と因子分析から,描いていた看護イメージと現実の学習が一致していると考えている学生は「学習によって将来がみえる」「看護はやりがいがある」と答えており,その後の学習意欲が高まっていたと報告している.
本学の『がん看護学』の講義は3年次の選択科目であり,科目の目的は「がんは日本人の死因の第1位であり,いまだ死を意識せざるをえない病気であり,人生においての脅威として受け止められる.一方で,治療技術の向上で生存率も飛躍的に伸びてきている.がんには特有の経過や治療があり,患者やその家族には特有の体験や思いがある.がんにかかった人が病気をどのように受けとめ,どのような治療をして生きていくのかを理解し,がん患者との家族の生活を支援するための知識と技術について教授する」ことである.その人が病気をどのように受けとめ,どのような治療をして生きていくのかという特有の体験を理解するために今回,『がん看護学』の講義にケアカフェを取り入れ,学生のがんに対するイメージの変化と学びを明らかにした.
Copyright © 2021, Japanese Society of Cancer Nursing All rights reserved.