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Ⅰ.はじめに
近年,胃がんによる胃切除術は晩期合併症防止を踏まえたQuality of Life向上に重点を置く再建法を取り入れる傾向にある.しかしながら,摂食機能と直接関連する臓器を切除する胃切除術後の患者はさまざまな機能失調を依然として抱えているため,その食生活には食事摂取に関連した合併症や不定愁訴予防のコントロールが必要不可欠である.また,食生活は患者だけの問題でなく,食を共にする同居家族との関連が重要な因子となる.
患者の側面からみた家族に関する報告では,胃切除患者の約70%は家族に調理を委ねていること1),摂食行動に対する家庭での気兼ねが患者の回復に負の影響を及ぼしていること2),術後1年経過しても家族構成が患者のwell-beingに大きく影響していること3)が報告されており,患者・家族の関係性および関与の仕方によって,その後の患者の回復や双方の生活に影響を及ぼしていると思われる.筆者の先行研究4)において,患者を対象にした入院中から退院後1カ月の移行期に焦点をあてた食の取り組み方に関する調査を行った結果,患者は食事摂取に関するつらさや,胃切除術に応じた新しい食べ方を習得することの困難感が生じる中,家族を巻き込みながら試行錯誤に自分の胃に応じた食べ方を試しながら回復に向けて食の再構築に取り組んでいた.しかしながら,胃切除後の食生活に関して家族を対象にした文献はなく,ほとんどその実態が明らかになっていない.
一方,手術を受けたがん患者の家族に焦点をあてた研究では,家族は患者のがんへの脅威を感じるとともに,病気を再発させないための健康管理の重要性を認識し患者に療養を専念させるように取り組んでいると報告している5),6).またStrauss7)は,在宅においてほとんどの医療的な仕事はたった一人の配偶者によって行われることが多く,その仕事には医療に関係する仕事と家事も含まれることや,主たる介助者は行うべき多くの医療の仕事について学ばなければならないことを述べている.以上のことから,胃がんによる胃切除術を受けた患者の家族,特に配偶者の場合は,患者の回復を促すために多くの医療的仕事や家事を一手に引き受けながら,変化する食に対応しつつ患者を支えるために懸命な取り組みをしていると予測される.
そこで本研究では,入院中から退院後1カ月の環境移行期において,患者と食を共にする妻に焦点をあて,妻がどのような食への取り組みをしているか明らかにするとともに,妻に対する看護支援への示唆を得ることを目的とした.
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