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最近10年ほどの間に,極めて大きな出来事が看護の世界に起こっている.看護婦ではなく看護師と呼ばれるようになったこともその一つであるし,看護師のシンボルであったあの独特な帽子が義務でなくなったことも一つである.そうした,いわば外観的なこと以外に,もっと重要な変化の一つが看護専門学校の四年制大学の看護学部や看護大学への移行が進んだことであろう.当然,その上に大学院へ進学する看護師も増えてきている.さらに,研究の面では文部科学省の科学研究費の分科細目で「看護学」が独立したこともある.もう一つ,これまで看護師で日本学術会議の会員になった人はいなかったのであるが,平成17年10月に新しく生まれ変わった日本学術会議で,長年の夢であった看護系会員が誕生したことがある.会員ができたことにより当然連携会員もできた.このように看護の世界では良い方向への大変革があった10年であった.
ところが,現実の看護の現場では,例えば医療事故に際して,直接の実行者であるからという理由で裁判において責任が問われる事態も起こっているし,「看護師の裁量権の拡大」による我が国の医療の成熟への期待が,昔ながらの「医師の指示の下に」という言葉が生きている現実によって阻まれていることもある.我が国の医療が,危機的状態にある,崩壊寸前である,いやもう崩壊している,などといわれる現在,この医療問題は医者だけでは到底解決できそうにないところまで追い詰められている.こうした事態の中で,患者と家族のそばにいて疾患とそれを取り巻く邪悪なものを除去するために,看護師は何を行うべきなのか,医師の指示を得られないとき看護師に裁量の幅はないのか,など,問題の所在は明らかである.
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