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はじめに
ICNのNorma Langは,第11回日本看護診断学会学術大会で,しかも,この国際会議場において,看護活動における学術用語開発の必要性を強調して,「もし私たちがそれ(看護)に名前をつけることができないなら,私たちはそれをコントロールできないし,実践し,研究し,教育することも,それに対して財源を確保することも,それを公共政策に盛り込むこともできない」1)と述べている.これは1993年のICNにおける提言から発したもので,それ以来すでに14年が経過したが,看護の専門性は,看護診断を土台にして,果たしてどれほど発展してきただろうか.このことを今一度問うことは大切である.
看護診断の必要性重要性について多くの看護師は認識している.しかしながら,看護の質向上に対して看護診断は,どれほど直接に貢献しているのか.IT化の到来によって,多くの病院が電子カルテを導入し,確かに看護診断は活発になっているが,データ入力によって安易な看護診断になっていないか,正確な看護診断になっているのかなど,さまざまな問題が懸念される.
今回の日本看護診断学会では,看護活動の基本であり,学会の原点でもある「看護の専門性」に立ち戻ってみたい.1人ひとりの看護師は,患者に対してさまざまなケアをしているが,このケアにおける専門性とは,看護師としての特定の領域分野における知識・技能に基づいてのものである.そして,高度なレベルへの発展が期待されるものでもある.こうしたことを背景にして,他職者との違いを明確に示すこと,つまり,看護師としてのアイデンティティを示さなければならない.
言い換えると,看護師各自が得意とする看護領域(分野)を特定することによって,その専門性をいっそう洗練させることである.そのためには,看護診断をどのようにとらえることができるのか,という問いが生じてくる.
この問題意識に応えるために,①看護診断の意義,②看護の専門領域,③看護診断を看護の専門性に活かす,④エンドステージ看護専門領域,⑤看護診断を看護の専門性に活かすうえでの課題,などを検討することにしたい.
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