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はじめに
平均在院日数の短縮化や一般病棟のICU化などで,臨床現場では忙しさが加速している.さらに臨床現場では,毎年約1割の看護職員が入れ替わるため,新卒看護師を育てながらの病棟運営は,看護スタッフにとって大きなストレスとなっている.また,迎え入れる新卒看護師の看護基礎教育は,看護大学卒業から2年課程卒業まで多様である.当院に就職する看護師は,毎年,看護大学・短期大学卒が80%を占めるが,看護実践能力の育成や心理的フォローに苦労している.看護師のほとんどは,学生時代に「看護診断」を学び,臨地実習では看護診断をもとに看護計画を立案している.当院における就職後の看護記録の教育は,まず就職時オリエンテーションのなかで実施している.実際的な指導・教育は,病棟に配属後,臨床現場の指導者によるOJT教育を主体としている.
看護師には,患者の意思を尊重しながら,健康や安寧,QOLの向上を目指し,患者ケアを実践することが求められる.それには,看護診断を活用することで看護の標準化をはかることができる.多様な看護基礎教育の背景をもった看護師が,看護診断を活用することで,看護アセスメント能力の差や看護経験差を縮小させ,安全で安心,安楽なケアの提供ができるようになる.そして,看護診断に基づいて看護計画を立案・実施することで,最低基準の看護が保障できると考えている.
当院は病床数857床を有する急性期病院で,災害拠点病院,地域支援病院でもある.また,救命救急センター,総合周産期母子医療センター,小児医療センター,骨髄細胞移植センター,緩和ケア病棟などの機能をもち,名古屋西部地域の基幹病院として機能している.病床稼動率93%,平均在院日数は15.3日,1日平均外来患者数は約1,900名である.看護職員は750名で,約60%が看護大学・短期大学を卒業している.
当院が看護診断を導入してから10年近くが経過したが,当院でかかえる問題や課題は,他の多くの施設と共通していると思われる.当院の状況を分析・評価するなかで,看護診断が経営の指標となりうるかどうかについて検討してみたい.
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