第21回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【特別講演】
1.死後の世界をどうとらえるか
若麻績 敏隆
1
1善光寺白蓮坊住職・画家
pp.12-18
発行日 2019年4月30日
Published Date 2019/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003200151
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死に直面した人たちが見る風景
これまで,多くの宗教が,死後について語ってきた.その説き方はさまざまだが,しかし,死後,天国とか極楽とかといった楽園に赴くのだという説かれ方は,教義の理解はともかくとしても,極めて普通に行われてきた.現代の日本人には,特定の宗教の教義について詳しい人がそれほど多いとは思えないが,もし,極楽とか天国とかいうものについて,突き詰めて理解しようとすると,どうしても特定の宗教の教義に突き当たらざるを得ない場面がある.教義からみれば,宗教ごとの楽園は一致することはないが,実際にイメージされている死後の楽園の要素には,それほど差異があるわけではない.
一方で,特定の宗教を離れて,死に直面した人たちが臨死状態で体験することは,皆,非常に似通っていることが知られている.実は,先日,私の友人が他界したのだが,その友人が,亡くなる数日前,やや体調がもち直したときに私に電話をくれた.内容的には,私が彼にお見舞いのメールを送ったことについてのお礼だったのだが,そのとき彼は,こんなことを言っていた.「本当に具合が悪くて死にそうだったけれど,そのときに,あちらの世界を見てきた.きれいな花畑で気持ちのよいところだった」.私の知るかぎり,彼は,普段は,花畑などということを口にする人ではなかったが,その彼が花畑を見てきたという.残念ながら,その後,再び容態が悪くなって彼は亡くなったが,亡くなったときの彼の顔は,微笑んでいるように穏やかだったそうである.
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