第16回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【特別講演】
現場力を高めるための研究者との連携―実践知を科学知にするために
武田 利明
1
1岩手県立大学看護学部
pp.9-13
発行日 2014年4月15日
Published Date 2014/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100582
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Ⅰ.はじめに
今回の講演を依頼された際に,ある看護系学会の会長講演で紹介されたクルト・レヴィン氏の言葉「経験なき理論は空虚であるが,理論なき実践は盲目である」を,ふと思い出した.その方は,「理論なき実践は盲目である」を引用し,確かな根拠に基づく看護実践の必要性を強調されていた.実践の場で看護研究にも精力的に取り組まれていた方だったので,紹介された内容には説得力があり,大変感銘を受けた.筆者にとっては,「経験なき理論は空虚である」の言葉も強く印象に残り,教育・研究の場に身をおいている者にとって,いわゆる評論家になりがちであることを厳しく戒めていると理解した.研究者は,評論家にならないためにも実践の場で活躍されている多くの看護職と積極的に連携することが大切であるとの思いで今回の講演を引き受けた.
看護技術には,すでにエビデンスが得られている確かな技術と,裏づけはないものの経験的に有用と思われているものが混在している.後者に分類される看護技術のなかには,実は好ましくないもの,あるいは多少害があるものも少なからず含まれている.このような根拠のないケアであっても,作用は弱く一時的なものであるために,われわれ看護師は気づくことなく漫然と実施しているのである.看護研究の目的は,技術の有用性を裏づけるためのエビデンスを得ることと,意味のないケアを排除することの2つである.これらの目的を達成するためには,実践家の鋭い洞察力が特に大切である.今回は,実践家からの提案に基づいて,筆者らが実際に取り組んだ実証研究を紹介し,現場での考えるケアの重要性について解説する.
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