第15回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【特別講演】
老いの風景―視力を喪失した高齢者に対する家庭介護の体験から
渡辺 哲雄
1,2
1日本福祉大学中央福祉専門学校
2岐阜県東濃成年後見センター
pp.10-13
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100539
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はじめに
介護には被介護者の世界に対する想像力が要る.家族介護という本来利他的であるべき行為は,時に,わずかな想像力の欠如によって虐待と呼んでいいほどの利己的残虐性を帯びる.3年間の被介護生活の末,87歳でこの世を去った祖母の死に至るまでのいくつかの転換点は,介護者としての私の想像力の乏しさについて指摘しながら,老いてゆく高齢者とその家族がたどる1つの典型を示している.医療の進歩は疾病による死亡率を飛躍的に下げ,腎不全医療の現場も高齢化が進んでいる.一方で,核家族化の進展や女性の社会進出から派生する需要に応える形で介護の社会化が進み,医療従事者といえども親族の「老い」と「死」に情緒的,継続的に関与する機会は減少している.この文章は,筆者の反省に満ちた介護体験についての報告であると同時に,日常的に他人の死と向き合う職業人が陥りがちな,「老い」や「死」についての安易な一般化を戒め,老いてゆく者の世界に対する想像力の重要性について考える契機となることを目的としている.
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