データにみる健康戦略 21世紀への健康戦略—データにみるその目標・3
自殺の風景
倉科 周介
1
Shiusuke KURASHINA
1
1東京都立衛生研究所
pp.640-643
発行日 1992年9月15日
Published Date 1992/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900650
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自殺は死因順位ベストテンのレギュラーメンバーである.だが医療や公衆衛生の観点から自殺が取り扱われることはめったになかった.病気とそれにつながる死ならともかく,自殺はどうも医学医療の手に余る代物だと感じられるからだろう.そういえば,いまも古典とされる大著『自殺論』をものしたのも,医学者ではなくて社会学者のデュルケム(Durkheim, E)だった.だが自殺は社会の苦味や酸味の度合いを示すリトマス試験紙といってもよい.その原因がいろいろな意味で社会の暮らし難さに求められるからである.そして暮らし難い社会では,人間は病気にもかかりやすくなる.だから自殺の原風景はどこかで病気のそれと交錯するのではなかろうか.
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