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はじめに
慢性透析患者は,1983年以来毎年ほぼ直線的な増加を示しており,1997年末の患者数は17万人を超えている1).こうした血液透析患者は,透析治療に加えて,食事制限や水分制限を一生続けることを余儀なくされている.そのなかでも,1回の指導のみで自己管理がきちんとできる患者もいれば,毎回水分制限の必要性を指導し,注意を促してもなかなか実行できない人もいる2).
しかしながら,患者自身が自己管理をきちんと実行することで,透析治療中における身体的苦痛を最小限にしたり,また将来起こりうる合併症の予防につながることが示唆されている.そのため,治療中の患者のケアや患者の生活指導をする立場にある看護の役割が重要となってくる.
近年看護領域において,健康行動やその動機づけを理解するために,保健信念モデル3)が患者指導の理論的枠組みとして用いられてきた.最近では,この理論に加えて社会的認知理論4)が慢性疾患患者の自己管理に対する認知を理解する理論として活用され始めている5).社会的認知理論を基盤にしたBandura6)の理論は,人間の管理行動に影響する結果期待(outcome expectancies)と効力期待(efficacy expectancies)について説明している.
すなわち,人の自己管理行動は,「その行為を行えばよい結果が得られる」という結果期待(outcome expectancies)と「自分にはその行為ができる」という効力期待(efficacy expectancies)によって生じる自信から実行に移されると考えている.そして,この2つの予測を自己効力感7,8) (self-efficacy:セルフエフィカシー)と称して,人の行動選択に重要な役割を果たすと論じている.
医療においても自己効力感が有効な概念であるという研究9,10,11,12)が示されており,わが国でも慢性疾患患者のセルフケアと自己効力感の関連性に注目した研究13,14)がある.透析患者においては,食事管理行動と自己効力感の関連性についての研究15,16)があり,自己効力感が透析患者の自己管理に関係があると注目されている.しかし,特に慢性透析患者における水分摂取に関する自己管理と自己効力感の関連性を扱った研究はまだ少ない17).
そこで今回,維持血液透析治療を受けている患者のセルフエフィカシーと自己管理(水分摂取)について調査を行った.
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