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はじめに
慢性腎不全のため,透析治療を受けている患者は年々増加の傾向をたどり,1998年では185,322人であった1).透析治療に加えて,患者は水分や食事制限を一生涯続けていかなくてはならない.
患者の日常生活において必要となる自己管理は重要な意味をもち,透析治療中の身体的苦痛や将来起こりうる合併症を予防し,疾患をもちながらでもより苦痛の少ない日常生活を送ることが可能となる.そのため,患者の治療中,側にいて患者のケアをし,かつ患者の食事や水分摂取について指導する立場にある看護の役割は重要である.
近年,これらの健康行動を継続していくための動機づけや支援の方法について,さまざまな研究がなされている.看護では健康行動やその動機づけを理解するために,保健信念モデル2)が患者指導の理論的枠組みとして用いられてきた.最近ではこの理論に加えて,社会的認知理論3)が慢性疾患患者の認知を理解する理論的枠組みとして活用され始めている4).
透析患者の治療に対するコンプライアンス行動,特に食事や水分摂取に対する患者のコンプライアンス行動やその行動に影響する要因についての研究は1980年代ころから欧米で行われてきている5~7).最近では,わが国においても行われるようになっており,とりわけ,透析患者の自己効力感(セルフエフィカシー)と自己管理(食事や水分摂取)についての研究が盛んになっている.
このセルフエフィカシーは,透析患者の自己管理の認知度や行動の継続の強さを予期できるものとして注目されている8,9).セルフエフィカシーとは,個人がある状況において必要な行動を効果的に遂行できるという確信で,実際の行動を予測しうる行動変容の鍵概念である10).このセルフエフィカシーが,透析患者の健康行動を予測し,行動変容を促進する手がかりになると考えられる.
前回は,透析患者のセルフエフィカシーが「疾患に対する感情」,「透析治療計画行動」,「予防行動」,「健康管理行動」の4つの因子からなり,また平均除水率5%以下の水分管理が良好と考えられる群が「透析治療計画行動」,「予防行動」のセルフエフィカシーを高くもっているという特徴について報告した11).そこで今回は,対象者数を増やし,関連があると思われる透析患者の個人背景とセルフエフィカシーの得点との関連を明らかにすることを目的とした.
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