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Ⅰ.WFRCの前身WCRCの生い立ち
1983年は,アメリカ腎臓病看護協会(American Nephrology Nurses Association: ANNA)にとって記念すべき年であった.というのも,1966年にクリーブランド・クリニックのナースたちの呼びかけで始まった透析看護婦の集いは,アメリカ人工臓器学会(American Society for Artificial Internal Organs)の援助を受けて開催されてきたが,1982年を最後に打ち切られることになり,専門看護を目指す独自の道を歩むことになったのである.独立の最初の開催地をフィラデルフィアに選んだことからも,その意気込みが伝わってきた.初めて企画されたインターナショナル・ワークショップ「透析看護の現状報告」に,日本透析看護研究会からも,ツアーを組んで参加・発表した.ヨーロッパ,カナダ,南アフリカ,オーストラリアなどからの報告もあり,のちにこのときのメンバーがWCRCの結成にかかわることになった.隔年に国際シンポジウムを開催することになり,1985年はヨーロッパ透析移植看護学会(EDTNA)がベルギーで主催,1987年はANNAがニューヨークで開催した.このとき,隔年開催は経済的に困難という理由で3年ごとに開くことが決定した.1990年,EDTNA主催のウィーンにおける国際シンポジウムでは,当時問題となっていた東西ドイツ統合の気運,南アフリカの人種差別,中近東の内戦などが,国際会議における討議に大きく影響し,南ア代表の発表に不満を表明したアフリカ系の人々が,一斉に退場する場面もあった.日本における臓器売買の報道も問題視され,会としてどのように対処するのかと質問された.
会議後に開かれたシンポジストの会合で,これまでのような単なる情報交換にとどまらず,より積極的な国際化の道を検討すべきとの意見が多く,WCRC(World Council for Renal Care)の結成が提案され,全員の合意のもとに準備が進められることになった.
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