巻頭言
Real World
一ノ瀬 正和
pp.345
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100567
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2004年の欧州呼吸器学会(EuropeanRespiratory Society,ERS)総会はスコットランドのグラスゴーで開催された.年々盛会になっていく総会だが,参加した感想をいくつかあげる.
初日の喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関するPharmacoepidemiologyのシンポジウムで何度か「Real World」という表現が使われ興味深かった.それはマンチェスターのVestob教授の講演で,「大規模試験の結果が必ずしも実際の薬剤の有用性を反映していないのではないか?」という問題提起であった.確かに,いわゆる「治験」では患者選択基準が厳密で様々な除外基準が設けられており,対象患者はかなり「純」な群となる.一方,実際の喘息なりCOPD患者でわれわれが遭遇し管理している群はかなり雑多なものである.大規模試験の結果は確かに尊重されるべきだが,それのみが正しいという思い込みはもちろん禁物である.EBMは念頭に置きながら常に患者個々人に合致した管理を模索する心がけは忘れずにいたい.よりReal Worldを知るためには「普遍性」と「特殊性」のバランスの取れた知識の集積が肝要であろう.
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