【教育講演】
1.カウンセリングにおける行動変容―特に“気づき”を中心に
小山 充道
1
1札幌学院大学
pp.24-29
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100006
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Ⅰ.“気づき”の必然性
“気づき”は患者にとっても援助者にとっても,自他の心を“わかる”ための長い経過のスタートライン,つまり入り口,玄関だとたとえることができる.“わかる”ことから離れた“気づき”は,人間心理についていえば起こるはずがないことだとされる.しかし医療の現場では,ありえないとされることがしばしば起こる.気づきが浅くて,わかるまでに到達しない人や,たとえ気づいたとしても,今の現状をわかろうとしない人や,否認する人もいる.一方では気づきすぎて,狂う寸前の人もいる.「気づかないでいるほうが,この方にとってはいいのかもしれませんね」と思わせるような重度の知的障害にある人々など….
私の義父は地元の保健所長を勤めた内科医師だった.義父は腎不全症で長らく腎臓透析を受けていた.最初は通院で過ごせたが,最後は自宅に戻れず,ある日合併症で帰らぬ人となった.まだ50歳代の若さだった.義父は入院して以来,よく外の風景を見つめていたという.葉が緑に変わっていくように,微細な自然の変化に敏感になっていったと聞いた.それから12年後,義父の法事を終えた夜中の午前2時30分,私は「猛烈な速さで走り去る車の夢」を見た.
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