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看護の教育が学校教育として認められた昭和26(1951)年の保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則には、看護倫理や職業調整の科目が独立して位置づけられていた。しかし、昭和42(1967)年の指定規則の改正で看護学総論に含むとなり、いつのまにか倫理観やプロフェショナリズムを教育する事から遠のいてしまったように思わされた。一方、アメリカで1970年代に広まった生命倫理に関する考え方が、1980年代後半に日本に入ってきて、その主要な用語が医療・看護の世界で使われ出すとともに、医療の進展や社会・人々の変化等で倫理の重要性が叫ばれるようになり、1990年代の後半頃になって看護の基礎教育や卒後教育等で、再び看護倫理の教育が取り上げられるようになった。そのような状況の中で2008年に設立された日本看護倫理学会の年次大会は第1回大会より毎回大盛況で、その内容には目をみはるものがあり、看護に携わる者の研鑽の積み重ねと年次大会への期待の大きさを思わされる。
私の倫理への開眼は、アメリカへの2回の留学である。1964年にがん看護を求めて初めて留学したニューヨークのがん専門病院では、患者の権利の尊重と称して徹底告知、徹底治療、徹底延命が行われていた。これが真に患者の幸せかと疑問を抱いて帰国し、10年後の1974年に、これらの出来事に挑戦あるいは理解を深めたいと勇んで再留学した。しかし、当時の徹底告知にはクライシス・インターベンションが、徹底治療・延命にはインフォームド・コンセント、QOL等が行きわたり、その激変ぶりに驚かされた。このように時代の変遷をつぶさに体験できたことは、私の看護人生にとって大きな宝物をもたせてもらった。当時は、アメリカにおける出来事の変化のすばやさに唯々感動していたが、後になって、その根底にアメリカにおける1960年代初期の科学の爆発的進展から1970年代の生命倫理の台頭、国家がん対策法の制定など、人々や医療、環境に対する考え方に根本的な変化がもたらされていた事を知って、納得するとともに新たな感動をおぼえさせられた。
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