レター
気づきへの葛藤に揺れる臨床の看護師から
阿部 洋子
1
1水戸赤十字病院 看護部
pp.37-38
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
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第一回目となる日本看護倫理学会の学術集会に参加し、シンポジウムの資料に目を通した時、こみ上げる思いがありました。学会で感情を揺さぶられる体験は初めての事です。それは、高田早苗先生が書かれたこんな一文を目にした時でした。「看護師の報告が取り上げられないままに、意見が聞きいれられないままに、患者の意向とは異なる意思決定がなされてしまうケースも少なくない。病名などの告知や治療に関するICの内容・進め方は言うに及ばず、入退院の許可などなど、強力な権限をもつ医師の無理解の前では、看護師が意思決定に与る機会はきわめて限られ、無力感に陥ることもある。そのような職場環境でサバイバルする術は、感受性を鈍らせることしかない。」
私が師長になって間もない頃のことです。がん終末期の方が多く入院する病棟でした。日に日に全身の浮腫が強くなる方に尿量を確保する目的で、主治医から輸液増量の指示が出ていました。ここ数日500ml以下の尿量が続いている状況で輸液を追加することは、浮腫を増強させることになると考えました。その方は、体を動かす事も困難で息苦しさも訴えています。その旨を主治医に伝え輸液の減量を申し入れましたが、医師は脱水の是正が必要と指示を変える事はありませんでした。そしてこの状況は続き、毎日ケアにあたる看護師は、なんとか患者の苦痛を軽減する方法はないものか悩んでいました。私は、終末期患者への輸液に関する文献を読み、主治医に再度交渉しました。結果は、最初の時と同じように脱水の説明をされ、そして、同じ事を何度も訴える私に対して怒りをぶつけられただけでした。
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