◆特集 介護老人保健施設における作業療法—OTのジレンマを考える
介護老人保健施設における作業療法—OTのジレンマを考える前に
浅海 奈津美
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1北里大学医療衛生学部
pp.560-563
発行日 2005年12月15日
Published Date 2005/12/15
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老人保健施設の誕生
老人保健施設(以下,老健)は1986年,老人保健法の改正に伴い,「疾病,負傷等により,寝たきりの状態にある老人又はこれに準ずる状態にある老人に対し,看護,医学的管理下における介護および機能訓練その他必要な医療を行うとともに,その日常生活上の世話を行うことを目的とする施設」と定義され創設された1).当時,病院におけるいわゆる社会的入院や,特別養護老人ホーム(以下,特養)における医療・看護機能の不足,措置入所の手続きの煩雑さが問題になっており,生活の場で且つ医療が提供されるという福祉と医療の中間機能,これらの施設と在宅を結ぶ機能の,両者の担い手であることを期待され誕生したのである2).その背景には,老人医療費と,公的負担の大きい特養の需要の抑制という,国の財政上の理由もあった3).1980年代は,要介護高齢者対策として在宅ケア重視が明確に打ち出された時期である.老健も在宅ケアの受け皿としての機能の方が強調され,「老人の自立を支援し,その家庭への復帰を目指すものでなくてはならない」という基本方針が,創設の2年後に国によって示された4).この基本方針は,老健が介護保険施設となった現在も引き継がれている.
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