◆特集 質的研究の魅力—作業療法からの視点
質的研究の有用性—質的に観察することから学ぶ
種村 留美
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1京都大学医療技術短期大学部
pp.544-547
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
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はじめに
質的研究は,社会学や人類学において,他者を理解したいという関心から生まれている.作業療法においても,対象者のこれまでの社会背景を踏まえた生活障害を理解したいと考えるとき,現状の機能的評価のみから推し量ることには限界がある.
私は高次神経障害を有する方々と接したとき,複雑な症状を併せ持つ障害像を既存の評価の分類法から,または既存の概念から明らかにしたいと考えても,当てはまらない症状や理解しがたい症状が数多くあり,障害の全体像を表現することに苦慮していた.
修士論文では,失行症者はどのような動作・行為を示すのかということを,既存の概念によらず,または学術用語を使用せず,素朴に,現象そのものとして理解したいと考えた.そこで質的に観察する方法を選んだのである.
本論文では,私が失行症患者の動作・行為をどのように質的に観察していったかを述べるとともに,質的研究を進めるにあたって受けたスーパービジョンを報告することで,質的研究の有用性と実際の進め方を伝えることを趣旨としたい.また,対象者を理解するための観察の妥当性を高めるためには,インタビュー方法や,観察した内容の分析方法も重要なので,併せて述べてみたいと思う.
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