◆特集 質的研究の魅力—作業療法からの視点
社会的世界としての作業療法過程を解明するために—不断の達成とみるエスノメソドロジーの示唆
八田 達夫
1
1広島大学医学部保健学科
pp.540-543
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
質的研究への関心
「社会科学は自然科学と異なり,社会的世界を自然的客体として当然視できない.社会的世界の事物や出来事は,それが存在するためには成員に認知される必要がある.社会科学者の研究すべきもう一つの分野は,成員による意味付与・意味理解作業の産物としての社会的世界というものの事実性である.事実性というものは,出来事を眺めたり語ったりする解釈方法を通して社会的に生み出される」1).私の関心は,私達が普段行っている「作業療法」の臨床現場をこのような社会的世界の一つと考えると,そこにいままでとは異なった様相(事実性と過程)が見えてくるのではないかということである.
作業療法士にとって,作業療法はいうまでもなく,ある確かな構造をもった事実として認知されているだろう.私達は,そのような作業療法の結果として患者の変化を語ることもできる.しかし,私達は現場そのものの過程を十分に説明してきていないように思われる.現場こそ作業療法の立脚点であり,直感的にすぎないかもしれないが,私には,その現場の過程にこそ作業療法のすべての秘密が隠されているように思われてならない.
Copyright © 2001, Japanese Association of Occupational Therapists. All rights reserved.