◆特集 失敗と成功に学ぶ住環境整備の考え方と技術
失敗と成功に学ぶ住環境整備の考え方と技術
辻岡 勝志
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1在宅リハビリ・ケアシステム研究所
pp.190-193
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
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はじめに
高齢者や障害者が自宅で生活するために,自立を助け,介護者の負担を軽減し,ヘルパーや訪問看護などの公的サービスや福祉用具の導入をし易くするために,近年住宅改造が重要視されてきた.住宅改造は,建物の増改築を伴うような大規模なものだけでなく,手すりを取り付けたり台を置くだけという改造でも,即効果が現れて,動作が容易で安全になり,利用者には大変喜ばれるという特徴がある.しかし,実施した改造が役に立たなかったり,本人以外の家族にとって不便なものになったり,数年後には本人の身体機能が変化して使えなかったり,というような失敗例も見られる.あるいは施工の直前に家族が反対して取りやめになってしまうケースもある.例えば,浴室の壁に取り付けられた頑丈なな手すりが,入浴には一度も使われずにタオル掛けになっている,というような現場を時々見かけることがある.動作の分析や,取り付け後の手すりを使ったADL指導が十分なされずに実施された住宅改造では,往々にしてこのような惨憺たる結果に終わるものである.
今回,作業療法士の訪問訓練から関わりが始まり,住宅改造では浴室の改造は失敗に終わったが,デイサービスの特浴(機械浴とも呼ばれ,昇降装置による全介助で浴槽につかる入浴方法)を補完的に利用した結果,本人と家族の積極的なデイサービス利用へとつながった1事例を通じて,住環境整備における失敗と成功について考えてみたい.
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