特集 高齢者の転倒
高齢者に対する住環境整備
池田 由里子
1
Ikeda Yuriko
1
1株式会社デアマイスター
pp.337-343
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106036
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はじめに
「おうちに帰られたら,くれぐれも転倒には気を付けてくださいね」という言葉かけで一体何人の退院する患者さんを見送ったことだろう.どういう風に気をつけるのか,具体的な対策,説明はできていたのだろうか?転倒に対する不安から,「動かなければ転ぶことはない」と思われかねない.これにより部屋に閉じこもりがちになり,活動性は低下し,ついには寝たきりになったり,痴呆症状を呈したりするかもしれない.本当は自立した,アクティブな生活を送ってほしいと思っていたのに,その曖昧な声かけで理学療法士自身が患者さんの行動範囲を狭めているのかもしれない.
われわれは自宅に帰って常に何かに気をつけていることなどあるのだろうか?家は心からリラックスできる場なのであり,高齢者が低下した身体機能で常に気を張って注意して暮らすのではなく,彼らなりに普通に生活を送ることができるような,安全な住まいであるように,環境面にも働きかけることが理学療法士の仕事であると考える.
そこで本稿では,住環境整備というアプローチによって,転倒と,転倒による骨折をいかに予防できるかについて述べる.
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